この間、ドラマ好きの友人に「獣になれない私たち、って打ち切りだったの?」と聞かれて、気になって調べてみたんですが…実は、こちらは打ち切りではなく、全10話で予定通り完結したドラマなんです。正直、その時点では私も「低視聴率 = 打ち切り」という図式で考えていたので、「あ、そうなんだ」という感じでした。
でも調べていくうちに、もっと複雑な背景が見えてきました。なぜ視聴率が低かったのか。なぜ「打ち切り説」が出たのか。そして、実は「社会問題を真摯に描いた意欲作」として、今になって再評価される傾向もあるということが。
このドラマ、2018年に放送されたものだからこそ、少し距離をおいて見るといろいろ見えてくるんです。一緒に整理してみましょう。
獣になれない私たちってどんなドラマ?
基本情報(放送期間・出演者など)
『獣になれない私たち』は、2018年10月17日から12月19日にかけて、日テレの水曜22時枠で放送されたドラマです。全10話で、予定通り完結しています。出演は新垣結衣と松田龍平が主演で、脚本は野木亜紀子。野木亜紀子は『逃げるは恥だが役に立つ』や『あなたのことはそこまで』など、人間関係の複雑さを描く脚本で知られている人です。
このドラマが放送されたのは、新垣結衣が『逃げ恥』で大ヒットを飛ばした直後です。あの作品の成功があったからこそ、『獣になれない私たち』にも期待が集中していたんですね。
ストーリーの概要
『獣になれない私たち』は、表面的には「大人のラブストーリー」という設定です。ですが、実は婚外恋愛という社会的なタブーをテーマに、人間の欲望と家庭の義務、倫理と本能の衝突を描いています。新垣結衣演じるヒロインが、松田龍平演じる男性と惹かれ合いながら、同時に自分たちの行動がもたらす影響(家族、周囲の人間関係など)と向き合い続ける。その過程で「正しいこと」「間違ったこと」という簡単な二項対立では済まない、現実的な問題が山積みになっていく…という話です。
つまり、単なる「恋愛ドラマ」ではなく、「社会問題を正面から描くドラマ」だったんです。そして、その「現実的さ」と「重さ」が、視聴者の期待値とズレていた部分があります。
結論:打ち切りではなく全10話で完結した
放送期間と話数
正直、ここは明確です。『獣になれない私たち』は2018年10月17日にスタートし、12月19日に全10話で完結しました。これは予定通りの放送期間です。途中で短縮されたわけではなく、延長されたわけでもありません。
ここまで見ると、「じゃあなぜ『打ち切り説』が広がったの?」という疑問が出てきますよね。それが次のセクションのポイントです。
完結のされ方
とはいえ、最終回は「視聴者の期待通りのハッピーエンド」ではありませんでした。むしろ「後味が悪い」「モヤモヤしている」という評価が多かったんです。これが「打ち切りみたいだ」という印象につながった一因かもしれません。
ですが、これは打ち切りによる「ブツ切り感」ではなく、むしろ「制作意図によるもの」だったんです。脚本家の野木亜紀子は、「簡単には解決しない社会問題」「完全には救われない登場人物たち」という現実的な終わり方を選びました。その選択が視聴者の心に「モヤモヤ」を残す結果になったわけです。
個人的には、ここが「このドラマが低視聴率になった大きな理由」だと思います。期待値とのズレ、そして「綺麗な終わり方ではない」という現実。それが「打ち切りのようだ」という誤解につながったのではないかと考えます。
なぜ「打ち切り説」が出たのか
前作『逃げ恥』との視聴率の大落差
『逃げるは恥だが役に立つ』の平均視聴率は14.5%、最終回は20.8%でした。一方、『獣になれない私たち』は平均8.7%、最終回8.3%です。
graph TD
A["『逃げ恥』
平均視聴率 14.5%
最終回 20.8%"]
B["期待値UP
新垣結衣の
新作ドラマ"]
C["『獣になれない私たち』
平均視聴率 8.7%
最終回 8.3%"]
D["期待値とのギャップ
5.8%ポイント低下"]
E["視聴者の評価
『期待ハズレ?'
『打ち切り?'"]
A --> B
B --> C
C --> D
D --> E
視聴率の落差:平均で5.8ポイント低下、最終回で12.5ポイント低下
この数字を見たら、多くの視聴者は「あ、これ失敗作なのかな」と思うのは当然です。『逃げ恥』での大成功があったからこそ、期待値が高かった。だから落差も大きく感じられた。「こんなに視聴率が下がったら、もしかして打ち切りに?」という連想が自然と出てくるんです。
新垣結衣は『逃げ恥』で完全に「視聴率の看板」になっていました。「新垣結衣主演 = 高視聴率確定」みたいな信仰があった。だからこそ、『獣になれない私たち』の8.7%は、単なる「低視聴率」ではなく「期待値からの大きな下振れ」に見えたわけです。
SNSでの「打ち切り感」の声
Twitter やネット上では、「このドラマ、つまんなくて打ち切りになったんでしょ」という声が散見されました。もちろん、「打ち切り」は公式には発表されていません。ですが、「低視聴率 = つまんない = 打ち切り」という図式が、視聴者の中で勝手に成立していたんです。
気になって調べてみたんですが、当時の掲示板やブログを見ると、「これ、打ち切りになるんじゃないか」という推測や心配が書き込まれていました。そしてその推測が、事実であるかのように伝わっていったわけです。
これって、情報がないところに「推測で埋める」という人間の心理なんですね。確実な打ち切り情報がないなら、「低視聴率だから、もしかして打ち切り?」と考えてしまう。その推測が積み重なって、いつしか「あのドラマは打ち切りだった」という誤った認識が定着してしまった。
メディアの報道
当時のテレビ誌やネットニュースでも「低視聴率ドラマ」という扱いを受けていました。「期待値が高い分、視聴率低迷が目立つ」という報道ですね。その報道を見た視聴者が「あ、失敗作なんだ。もしかして打ち切り?」と考えるのも自然な流れです。
ただし、どのメディアも「打ち切り」という言葉は使っていません。あくまで「低視聴率」という事実です。ですが、その事実と「打ち切り推測」が結びつくことで、誤解が広がったんだと思います。
視聴率が低かった理由、リアルタイム時の批判
期待値とのギャップ(恋愛ドラマ vs 社会問題ドラマ)
ここが最大のポイントです。『獣になれない私たち』は、視聴者が期待していた「恋愛ドラマ」ではなく、「社会問題ドラマ」でした。
新垣結衣と松田龍平。このキャスティングを見たら、多くの視聴者は「甘いラブストーリーかな」と期待します。『逃げ恥』での新垣結衣は明るく、ポジティブで、癒しがありました。だから「また、そういう役かな」という期待が自然と出てきます。
でも実際に蓋を開けてみたら、婚外恋愛という重いテーマ。家族がいる男女が惹かれ合い、その過程で誰も傷つく。そして「正解」がない。そういう「現実的で、重い」話だったんです。
この「ズレ」が、初回10.2%から翌週9%へ、そして8%台へと下降していった大きな理由だと思います。「期待していた話と違った。だから見るのをやめよう」という判断ですね。
ストーリー構成への批判(グダグダ、後味の悪さ)
リアルタイムで視聴していた人の間では、「この話、1話で済むのに10話引っ張ってる」「グダグダしてる」という批判が聞かれました。
確かに、婚外恋愛という重いテーマは、ダイナミックな展開に向かいません。むしろ「悩み続ける」「揺らぎ続ける」という状態が続くんです。その「動かなさ」が「グダグダしてる」と感じられたわけですね。
加えて、「後味が悪い」という声も多かった。これは単なる「不満」ではなく、むしろ制作側が「意図的に」そういう終わり方をしたからなんです。視聴者がスッキリできない終わり方を、敢えて選んだ。その「覚悟」が視聴者に伝わったからこそ、「後味の悪さ」を感じたんだと思います。
完全なハッピーエンドではないこと
テレビドラマ、特に水曜22時という民放ゴールデン枠を想像してください。通常、こういう枠のドラマは「視聴者を癒す」「希望を与える」というミッションがあります。ですが『獣になれない私たち』の最終回は、そうではありませんでした。
登場人物たちの「その後」は、決して「幸せに暮らしました」という終わり方ではなかったんです。むしろ「課題が残る」「完全には解決しない」という現実的な終わり方です。
これって、視聴者としては「疲れた」という感覚が残るんですね。「この10時間を使って、何かスッキリして欲しかったのに…」という心理。それが「つまらない、つまり打ち切りみたい」という感覚につながったのではないかと思います。
新垣結衣の「期待値」の高さ
これも無視できない要素です。新垣結衣は『逃げ恥』で、国民的女優レベルの認知を得ました。その時の「新垣結衣」というイメージは、明るい、前向き、可愛らしい、という感じです。
『獣になれない私たち』の新垣結衣は、その完全な反対。陰鬱で、揺らいでいて、倫理的な葛藤を抱えている。その「ギャップ」が、「あ、この人こんな暗い役もやるんだ」という驚きと同時に、「好きな女優のこんな顔は見たくなかった…」という複雑な心理を生み出したんだと思います。
いい女優さんほど、イメージのギャップが大きいほど、視聴者の心的負荷も大きくなります。
一方で、社会問題を正面から描いた意欲作として評価する声も
批判されるポイントが「意欲的」である理由
ここが面白いところです。「グダグダしてる」「後味が悪い」という批判。これらは、実は「意欲的」の裏返しなんです。
もし制作側が「視聴率重視」なら、「1話で完結させる」「幸せなラスト」という方向に作っていたはずです。ですが敢えてそうしなかった。8話、9話でも完結できるストーリーを、10話かけて「現実的な問題の複雑さ」を丁寧に描いた。
「後味の悪さ」だって同じです。「綺麗なハッピーエンド」にしていれば、こんな批判は受けません。でも「完全には解決しない」という現実を描くことで、視聴者に「考える余白」を残した。これって、単なる「つまらない」ではなく、むしろ「信念がある」という証拠なんです。
graph LR
subgraph Criticism["視聴者の批判"]
G["グダグダしてる
話が進まない"]
H["後味が悪い
モヤモヤしている"]
I["ハッピーエンドじゃない
落胆"]
end
subgraph Intent["制作側の意図"]
J["急いで解決しない
=リアルさへの
こだわり"]
K["簡単には答えが出ない
=社会問題への
向き合い"]
L["現実的な終わり方
=誠実さの証"]
end
G -.->|視点の転換| J
H -.->|視点の転換| K
I -.->|視点の転換| L
低視聴率の理由 = 制作の「勇気」である側面 ・グダグダ = 急いで解決しない、リアルさへのこだわり ・後味の悪さ = 簡単には答えが出ない社会問題への向き合い ・ハッピーエンドでない = 現実の複雑さへのリスペクト
脚本家・野木亜紀子のスタイル
野木亜紀子という脚本家を知ると、『獣になれない私たち』がなぜこういう作風なのかが見えてきます。
彼女は『逃げるは恥だが役に立つ』で、「夫婦とは何か」「愛とは何か」を、綺麗事では済まさずに描きました。『あなたのことはそこまで』では「職場の恋愛」「世代ギャップ」「倫理観のズレ」を描きました。『雜談生活』でも、人間関係の複雑さと向き合い続けています。
つまり、野木亜紀子は「綺麗事では終わらない」「登場人物が完全な善悪では描かれない」という方針を、一貫して持っている脚本家なんです。『獣になれない私たち』も同じアプローチ。婚外恋愛を「悪い人の話」「避けるべき話」ではなく、「人間なら誰もが陥りうる葛藤」として、平等に描いた。
そういう視点でこのドラマを見ると、「低視聴率」はむしろ「この脚本家らしい」という一貫性の表現に見えてくるんです。
「安易なハッピーエンド」ではない勇気
テレビドラマ、特に民放ゴールデン枠は「視聴率」が絶対の価値です。スポンサー収入、翌週の視聴率、再放送の価値。すべては「数字」に左右される。
つまり、『獣になれない私たち』の制作陣が「ハッピーエンド」にしていれば、視聴率も上がったはず。期待値との親和性も高まったはず。『逃げ恥』並みの成功もあり得たかもしれません。
でも『野木亜紀子 × 日テレ』は、敢えてそのラストを選ばなかった。
つまり、「数字を取るために内容を妥協する」という判断をしなかったわけです。その判断が「視聴率低迷」という代償を払ってまで、守るべき「誠実さ」があったということ。大人の判断だと思います。
配信で改めて見直す価値
時間をおいて見ると「いい作品」に見える理由
面白いことに、『獣になれない私たち』はNetflixやU-NEXTなどの配信サービスで見直されるようになりました。2024年現在でも、「このドラマ、実は好評だ」という声があります。
これはなぜか。リアルタイム視聴と配信視聴の「心の状態」が違うからだと思うんです。
リアルタイム時は「新垣結衣の新作ドラマ」「期待値を持って見よう」という前提があります。その期待値が邪魔をする。「これはこの期待に応えるべき作品か?」という判断が入る。
でも数年後、配信で見直すときは「期待値がない」んです。「この作品は何か」という純粋な問いで見られる。その時に初めて「あ、実はいい作品だ」という素直な感動が生まれるんです。
また、社会問題へのリテラシーも時間をおくと高まります。当時は「後味が悪い」と感じていた終わり方も、5年後には「現実的で誠実」と評価される。社会問題への理解が深まった視聴者なら、むしろ「こういう描き方がいい」と思うわけです。
個人的には、「時間差で正当に評価される作品」ってあると思うんです。『獣になれない私たち』は、その典型なんじゃないかなと。
どんな人向けのドラマなのか
graph TD
Start["『獣になれない私たち』
を見よう!"]
Q1{"期待:恋愛ドラマ?"}
Q1 -->|Yes| BadMatch["❌ 向きません
期待値と違う"]
Q1 -->|No| Q2
Q2{"期待:ハッピーエンド?"}
Q2 -->|Yes| BadMatch
Q2 -->|No| Q3
Q3{"社会問題を
リアルに描いた
ドラマが好き?"}
Q3 -->|Yes| GoodMatch["✓ 向いています!
後味の悪さを
『誠実さ』として
受け取れます"]
Q3 -->|No| Q4
Q4{"新垣結衣のイメージ
に縛られない?"}
Q4 -->|Yes| GoodMatch
Q4 -->|No| BadMatch
重要なのは「このドラマは、万人向けではない」という認識です。気になって調べてみたんですが、高く評価している人の共通点は何か。それは「恋愛ドラマを期待していない人」「社会問題をリアルに考えたい人」「ハッピーエンドではなく、課題を考えるきっかけにしたい人」でした。
つまり「見前に期待値を正しく設定する」ことが、このドラマを楽しむコツなんです。「新垣結衣の恋愛ドラマ」として見に行ったら失敗します。「社会問題を描いたドラマ」「後味の悪さを覚悟する」という心構えで見たら、その構え自体が「意欲的」に見えてくるんです。
正直なところ、このドラマは「出会わせ方」が全てだと思います。
まとめ
『獣になれない私たち』は打ち切りではなく、全10話で予定通り完結したドラマです。視聴率は8.7%と低かったですが、それは「つまらない」ではなく「期待値とのギャップ」が主な理由でした。
新垣結衣の前作『逃げ恥』が14.5%の高視聴率だったからこそ、8.7%は大きく見える。そして「婚外恋愛」という重いテーマ、「ハッピーエンドではない」という現実的なラスト。これらが「低視聴率=つまらない」という図式に見えたわけです。
でも実は、その「低視聴率の理由」は、制作側の「勇気」でもあるんです。視聴率重視なら、もっと分かりやすく、もっと癒される話にしていた。敢えてそうしなかった脚本家・野木亜紀子と制作陣の「誠実さ」が、低視聴率の本当の理由なんだと思います。
そして面白いことに、時間をおいて配信で見直すと「いい作品」に見える。期待値がないからこそ、この作品の「本当の良さ」が見えてくる。社会問題への理解が深まった視聴者なら、むしろ「こういう描き方がいい」と評価するんです。
つまり『獣になれない私たち』は「当時の視聴者には合わなかった」のではなく、「その時代には必要ではなかった」のかもしれません。でも「今」見たら、違う印象を持つ人も多いと思います。
あなたはどう思いますか?「後味の悪さ」を「誠実さ」として受け取れる人なら、このドラマはあなた向きかもしれません。