ルサンチマン打ち切りの理由。独特の主人公設定が視聴者に支持されず
TBSが放送した人間ドラマ『ルサンチマン』が打ち切りになりました。「ルサンチマン」とは、フランス語の「恨み・妬み・怨嗟」を意味する言葉。その名の通り、人生への怨嗟を抱える主人公が「逆転」を目指すというダークなテーマを持つドラマでした。
しかし、このユニークな設定が、実は視聴者のニーズとのズレを生み出してしまったのです。
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『ルサンチマン』とはどんなドラマか
独特の主人公。社会への怨嗟から始まる物語
『ルサンチマン』の主人公は、典型的な「負け組」です。非正規雇用、貧困、人間関係の失敗、人生への諦め…こうした要素で構成された、日本の現代社会における「下層の人間」として描写されました。
しかし物語は、単なる「可哀想な人の日常」ではなく、その怨嗟から生まれる「復讐心」「逆転願望」を軸に展開します。主人公が、自分より成功した人間や、自分を貶めた人間に復讐を計画し、実行していく…という倫理的にもグレーなストーリーラインでした。
このテーマは、文学的には深みがあります。フランス文学や倫理学の領域では「ルサンチマン」は重要な概念。日本でもニーチェ関連の著作を通じて知られており、知識層には魅力的なテーマです。
しかし視聴者にはダークすぎた
テレビドラマの視聴層の大多数は、「主人公を応援できる」「感情移入できる」という要素を求めています。ストーリーに正義感があり、主人公が困難を乗り越えて成長する…という古典的なドラマ構造を期待しています。
『ルサンチマン』は、その期待を180度裏返します。主人公は「社会への怨嗟」を動機に動き、時には倫理的に問題のある行動も厭わない。視聴者が「頑張れ」と応援できない主人公が、画面の中で暴走する…という構図は、多くの視聴者にとって「見るのが苦しい」「応援できない」という感情につながりました。
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視聴率低迷と放送枠の問題
『ルサンチマン』は放送開始から視聴率が伸び悩みました。初回の視聴率も一桁。その後も回を重ねるごとに下落し、最終的には片手の指の本数にも満たない視聴率に落ち込んでしまいました。
テレビ局の採算基準
テレビ局が「ドラマを継続するか打ち切るか」の判断基準は、基本的に「視聴率」です。
– **初回視聴率**: 作品の企画力と話題性を測る
– **平均視聴率**: 作品の継続的な人気度を測る
– **スポンサー評価**: 広告効果と視聴者層のマッチングを測る
『ルサンチマン』は、これら全てのカテゴリで基準に達しませんでした。ダークなテーマの作品だからこそ、視聴者層が限定され、広く支持を集めることが難しかったのです。
放送枠の問題
また、『ルサンチマン』が放送された時間帯も重要です。多くのドラマは夜10時前後の「ゴールデンプライムタイム」に放送されます。この時間帯の視聴者は、仕事終わりにリラックスして見られるドラマを求めています。
『ルサンチマン』のような「主人公の怨嗟と復讐」という重いテーマは、リラックスして見るには心理的負荷が大きすぎたのでしょう。結果として、視聴者は他局の軽めのドラマや、バラエティに流れていったと考えられます。
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なぜ企画段階で判断できなかったのか
これは、編集部(テレビ局側)の判断ミスとも言えます。
「ルサンチマン」というテーマは、確かに文学的には高尚です。ニーチェを学んだ知識層からは高く評価される可能性も。しかし、テレビドラマの視聴者層は、そうした知識層だけではありません。
むしろテレビ視聴者の大多数は、「わかりやすく、応援できて、前向きなストーリー」を求めています。その需要に対して、意図的に逆行するような作品を時間帯を変えて放送するリスクを、事前に検証すべきでした。
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ドラマの成功条件とは
テレビドラマが視聴者に支持される条件はいくつかあります。
1. **主人公への感情移入**: 正義的であれ、弱さであれ、「わかる」「応援したい」という感覚
2. **毎週の期待感**: 「来週はどうなるんだろう」という続きが気になる感覚
3. **解決への道筋**: 最終回に向けて「どう解決するのか」という納得感
4. **視聴者層とのマッチング**: ターゲット年代が、その時間帯にテレビを見ており、テーマに共感できるか
『ルサンチマン』は、これらのうち特に1と3で失敗していました。主人公への感情移入が難しく、「怨嗟→復讐」という単線的なストーリーでは、最終回への納得感も薄かったのです。
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まとめ。『ルサンチマン』から学ぶテレビドラマの現実
『ルサンチマン』の打ち切りは、テレビドラマの企画における重要な教訓を示しています。
– **テーマの高尚さ ≠ 視聴率の高さ**
– **知識層への評価 ≠ 大衆的支持**
– **放送時間帯との相性は極めて重要**
ドラマは、エンターテインメント。視聴者が「見たい」と思えるストーリーであることが最優先です。『ルサンチマン』のようにテーマ性を重視しすぎると、結果として誰からも支持されない作品になってしまう可能性があります。
これから企画されるドラマが、『ルサンチマン』の失敗を教訓に、視聴者ニーズとのバランスを取ることを期待したいところです。
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